上部消化管内視鏡検査説明書
上部消化管(咽頭・食道・胃・十二指腸)の内腔を内視鏡で直接観察し、がんや炎症など病変の有無を確認します。病変が見つかった場合、適切な治療法を選択するために詳細な観察を行い、必要に応じて組織検査(生検)を行います。
上部消化管検査には、内視鏡の他にバリウムによる造影検査がありますが、より精密な観察には内視鏡検査の方が優れています。また、造影検査で病変が疑われても組織検査ができないため、後日内視鏡検査を行う必要が生じます。
検査の方法
- 検査の前に、胃の粘液を除去しやすくするお薬を飲んでいただきます。
- 口または鼻から内視鏡を挿入し観察を行います。
- 必要に応じて、生検(病変の組織の一部を小さく採取すること)を行うことがあります。
- 鎮静(静脈麻酔)をしない場合、反射を抑えるため麻酔薬であるキシロカインスプレーをのどに噴霧します。検査中は、口腔内にたまった唾液は飲み込まないように注意してください。検査終了後ものどの麻酔が持続するため、1時間ほどは飲食しないようにして下さい。
カメラの種類
当クリニックでは細径内視鏡と拡大内視鏡の2種類のカメラを用意しています。
細径内視鏡
長所
太さが5.8mmと細いため、鼻からの挿入も可能です。
口からの挿入にくらべ反射による苦痛が少なく、検査中の会話も可能です。
鼻出血などの不安がある場合でも、口からの検査が可能です。(経口であっても拡大内視鏡にくらべると、苦痛はかなり軽減できます)
短所
レンズをきれいにしたり胃内の液体などを吸引したりする装置が小さいため、拡大内視鏡にくらべ、検査時間がやや長くなります。
拡大観察はできないため、詳細な観察が困難な場合があります。生検時、より小さな検体の採取しかできず、組織診断が困難な場合があります。
必要時は、拡大内視鏡による精密検査が別途必要となる場合があります。
拡大内視鏡
長所
125倍までの拡大観察が可能で、詳細な観察により診断精度が高くなります。生検時、適切な部位から検体を採取することで、正確な組織診断が得られます。
短所
太さが9.9mmと太く、反射による苦痛がつよくなる場合があります。(苦痛や不安が強い方は、鎮静での検査をお勧めしています)
偶発症
検査には細心の注意を払っていますが、以下のような事項が報告されています。
咽頭部の穿孔(穴があくこと)
入院や手術を要することがあるため、近隣医療機関へ紹介させていただきます。
歯牙の損傷や顎関節脱臼
- ぐらついた歯などは折れることがあります。予め看護師へお伝えください。
- まれに顎関節の脱臼をきたす場合があり、口腔外科紹介を要する場合があります。
誤嚥性肺炎
- 唾液などが気管に入ると、肺炎を起こし抗生剤投与や入院を要する場合があります。
鼻出血
- 鼻からの検査の場合、鼻出血を来たし耳鼻科での処置を要する場合があります。
マロリー・ワイス症候群
- 嘔吐反射などで粘膜が裂け出血した場合、内視鏡的な処置を要することがあります。
薬剤アレルギー
- のど麻酔や静脈麻酔薬によりアナフィラキシーショックを起こす危険性があります。
生検後出血
- 通常は自然に止血しますが、まれに出血量が多くなることがあります。
- 吐血や黒色便、ふらつき・冷汗などの症状がある場合は、すぐにご連絡ください。
その他
- 基礎疾患の悪化や心筋梗塞、脳梗塞・出血など不慮の合併症を来すことがあります。
- 脳や大動脈などの動脈瘤がある場合、検査中にまれに破裂することがあります。
- 血圧が180mmHgを超える場合、検査を中止することがあります。
- 体調不良などあれば、事前にスタッフへ申し出るようにしてください。
鎮静検査について
- 静脈麻酔薬によるアレルギー、血圧低下、呼吸抑制、徐脈などをきたす場合があります。
- モニターを装着し状態を確認しながら検査を行い、適宜必要な対応をとります。
- 検査終了後、意識がしっかりするまで1時間程度の経過観察が必要となります。
- 事故を避けるため、お車の運転は出来るだけ控え、公共機関の利用やお迎えの方をお願いするようにしてください。
- 自分で車を運転し事故を起こした場合、当クリニックは一切の責任を負いかねます。
費用について
- 自覚症状がある場合、一次検診で要再検となった場合、あるいは医師の指示がある場合 などは保険診療での検査となります。
- 自覚症状がとくになく、健康診断の一環として検査を希望される場合は、自費診療と なります。
- 自費診療として行った検査でも、病変が疑われ生検や治療を行った場合は、処置以降から保険診療扱いとなります。ただし、当日に保険証を持参いただかないと、全額自費負担となります。
- 検査着をご希望の方は別途費用がかかります。
検査費用の目安
3割負担 | 1割負担 | 自費 | |
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検査のみ | 5000~6000円程度 | 2000~2500円程度 | 25000円 |
検査+生検 | 9000~12000円程度 | 3000~4000円程度 | 26000~27500円 |
ACT内視鏡クリニック院長 友利彰寿